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昨年(2003年)は、中国初の有人宇宙船打ち上げ成功というニュースがあったものの、日本の宇宙開発については、環境観測衛星「みどり2」の故障、情報収集衛星を積んだH2Aロケットの打ち上げ失敗、火星探査機「のぞみ」の故障による火星到達の断念など、暗い話が続いています。その失敗の原因のひとつに、基礎的な技術の低下があげられています。 昨年8月、宇宙開発事業団(現、宇宙航空研究開発機構)は、国産ロケットH2Aの部品製造を手がける宇宙機器メーカーの技術者を対象に「はんだ付け」の講習会を行いました。ロケット製造技術の向上のための講習に、何で「はんだ付け?」と思われるかも知れません。ロケットや人工衛星は、ハイテクの塊ですが、この製造は「一品もの」の手作りなのです。宇宙という過酷な環境で使用されるため、一つ一つの製造工程にはミスも許されません。しかし、実際、昨年1月にはH2Aロケットに部品トラブルがあり、調べてみると、電気信号部分を中継するコネクター部品に「はんだ付け」の不良があり、電線1本が断線していました。 この電気部品の接合部分に使われる「はんだ付け」は、基本中の基本なのですが、一見簡単のようで実は熟練を要するものだそうです。講師は、一線を退いた「はんだ付け」の名人で、「どのメーカーにも、はんだ付けの名人はいたが、製造ラインの自動化で高い技能を発揮する機会がなくなった。技術レベルは下がる一方」と指摘しています。昔はどこでも見られた「名人が若い技術者に技を伝えて引退していくという流れ」が、会社の合理化の流れの中で無くなったことも要因のひとつと言えるでしょう。 基礎的な技術力という事で明るい話題では、世界60以上の大学が取り組む1辺10cmの箱型人工衛星を製造し打ち上げる「キューブサット」プロジェクトにおいて、昨年6月に、東京大学、東京工業大学など4か国の学生らが手作りした人工衛星6機が、ロシアのプレックス宇宙基地から打ち上げられたことです。 このうち軌道投入後の交信に成功したのは日本の2大学の衛星だけでした。東京大学の人工衛星「サイ」(中須賀真一研究室)は、制作費120万円、東京工業大学の「キュート」(松永三郎研究室)は、150万円で、ともに1辺10cmの箱型の大きさで、重さ約1kg、太陽電池で発電しアマチュア無線で通信を行います。「サイ」は、デジタルカメラを搭載し、宇宙から地球の写真を撮影し送信しています。昨年10月の環境観測衛星「みどり2」や火星探査機「のぞみ」の故障の原因との見方もある太陽フレア(爆発)が発生した時でも、影響を受けずに今も通信を送ってきており、秋葉原の電気街で買ったコンピュータなどの市販品で作った人工衛星の「技術力とアイディアの高さ」を証明したといえます。また、技術力といえば、高い技術力をもつ「町工場」が集結して「人工衛星」を打ち上げる計画があります。人工衛星の名前は「まいど1号」。工場は小さくても、高い技術力が集まる東大阪において、不況に苦しむ関西を活気付け若い世代にモノづくりを継承することを目的として、「東大阪宇宙開発協同組合」が2002年12月に設立されました。 「歯ブラシからロケットの部品まで」作れないものは無いと言われた東大阪で、不況と若者のモノづくり離れが進み、貴重な技術が次の世代に継承されずに職人達が歳をとり、日本が世界に誇る匠の技が消えてしまうという危機感から、「苦しい時こそ夢を持たなあかん!」と、東大阪の技術力とパワーを結集して「メイド・イン・東大阪」の人工衛星をつくり、宇宙ビジネスに乗り出そうというものです。 宇宙という「夢」は、人をひきつけるとともに技術力の高さを発信し、優秀な人材や情報が集まりだしたといいます。大学で宇宙工学を専攻した小林さんもその一人です。小林さんは、大学で東大阪の話を聞き、理事長の青木豊彦さんが経営する株式会社アオキ(従業員約30名の米ボーイング社のジャンボジェット機部品を製造する世界最小の工場)に入社、国際宇宙連盟大会に単身乗り込み、小型衛星の権威、英サリー大学のマーチン・スウィーティング教授を呼びとめ、今でもメールのやり取りが続いていると言います。 また、具体的には、先の「キューブサット」プロジェクトで出てきた、東京大学の中須賀真一助教授の研究グループと組み、量産化できる小型衛星を開発する事業が計画され、その計画が、独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託研究事業に採択され、今後5年間で約7億円の助成を受けることになっているようです。2005年にも打ち上げを計画する「まいど1号」は、その試験機の位置づけとして、地球の画像を地元の小中学校に送ったり、温度変化を観測することで、宇宙や地球の環境を学ぶ教材として、「子供たちに宇宙への興味を持ってもらい、宇宙産業を関西に根付かせるための人材育成につなげたい」と話しています。 どんな大きなプロジェクトであれ、どんな小さな物事であれ、基礎的な力(技術)が大切だといえます。私自身、学校の勉強で、「こんな勉強が将来何の役にたつのか」という事がありましたが、これも物事を考える基礎的な力を学ぶということでは大事なことだったのでしょう。何事にも、初心にかえって基礎の力を大事にしていきたいものです。 福井新聞 2003年9月24日付、2004年1月1日付 地理とGISの情報発信サイト(GIS NEXT EXPRESS NEWS) 毎日新聞サイト(Mainichi INTERACTIVE DIGITALトゥディ) 東大阪宇宙開発協同組合HP http://www.sohla.com/ |