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何か難しい問題に突きあたったとき、集中して長いこと考えても答えが出ないが、ふっと集中力が途切れた時に答えがふっと浮かんでくるということはありませんか。 何か新しい発見や創造をするときの頭の使い方について、少しまとめてみました。 臨床心理学者の河合隼雄さんも言っていますが、思考するのをやめた時に名案が浮かぶということがあります。 アンリ・ポアンカレというフランスの数学者が、フックス関数について有名な発見をしたのですが、その発見をする前に彼は、その関数の問題について2週間の間さんざん考え込んでいました。でも、答えが出ない。それで、「もうだめだ」と思ったのか、旅行に出かけ、その間、数学のことはすっかり忘れていたそうです。ところが、旅行中、乗合馬車に乗ろうとして階段に足を掛けた瞬間、突然パッと答えがひらめいたというのです。2週間も集中して考えて答えが出てこなかったことが、旅に出て忘れていたら、答えが突然浮かんできた…。それまで考えこんできたということも意味のあることですが、考えてばかりいても答えが出てこないということです。 このような真理の発見の事情について、ポアンカレは、次のように述べています。「発見のためには、意識的な活動に続く休息の時間がなければならない。この休息のあいだにも頭脳は無意識に活動している。この自分の知らないうちに、さまざまな数多くの組み合わせが試みられ、感受性と審美性に強く訴えるのである」。 これは、心理学でいう、「あたため」という現象が脳の中で起こるためです。懸命に集中したのちに休息の時間を持つと、インスピレーションは浮かんできやすいということですね。 1940年に初版が出た今では古典的な名著である「アイディアのつくり方」(TBSブリタニカ ジェームス・W・ヤング)では、アイディアのつくり方について、5段階に分けて説明をしています。 @「データ(資料)集め」、A「データの咀嚼」、B「データの組み合わせ」、C「発見の瞬間」、D「アイディアのチェック」です。そのうち、第3段階の「データの組み合わせ」から、第4段階の「アイディアの発見」は、無意識のうちになされることが多いと言っています。第1から第2の段階で、集めてきて資料をあらゆる方向、関係、要素で咀嚼し十分に思考を加えていく、そして、次第に心の中でごっちゃになり、どこからもはっきりした明察が生まれてこずに絶望状態に陥ります。そこまでの努力を実際やりとげた時、第3段階に移る準備ができたということになります。第3段階は、問題を全く放棄すること、できるだけ完全にこの問題を心の外に放り出してしまうことであるといいます。ここですべきことは、問題を無意識の心に移し、眠っている間にそれが勝手に働くのにまかせておくということのようです。 第1段階で集めた食料を第2段階で十分咀嚼し、第3段階で胃が無意識に活動し、消化過程がはじまるわけです。そこでは、実際の身体でもそうであるように、消化を助けるため、難しい事を考えることでもなく、心身をリラックスさせ、自分の想像力や感情を刺激するものに心を移すことだといいます。 そして、第4段階は、その到来を最も期待していないとき、風呂に入っているときや朝まだすっきりと目覚めていないときなどに突然訪れてくるのです。 多くの発明家や科学者も同じようなプロセスを体験しています。 脳というか、無意識の働きとは不思議なものですね。 プロ棋士の谷川浩司さんは、その著書「無為の力」の中で、次のようなことを言っています。将棋の棋士は、長考することがよくあり、1手に1〜2時間かける事があります。しかし、あまり長い時間を考えていると、同じひとつの方向からしか物事を見られなくなり、それが先入観となって、かえって考えが先に進まなくなることがある。なかなか新しい発想が出てこないと思ったら、ちょっと席をはずして、手洗いや他の対局を覗きに行ったりするそうです。集中力を他にそらすことで、逆に集中力高めることがあるようです。 また、臨床心理学の河合隼雄さんは、私のカウンセリングの基本は、「無為」だと言っています。「何もしない」ということですが、カウンセリングでは「何もしないことに全力を傾注する」、いわゆる「ボーッと聴く」ことがとても大事なことだといいます。しかし、ただ単にボーッとしているのではなく、その背後にはすごいエネルギーが使われているのです。精神分析学のフロイトは、「平等に漂う注意力」とも言っています。相手の話の方向性にとらわれず、いろいろな話のなかで全体に耳を傾けているうちに、自然に答えが見つかるものだといいます。方向性を持たずに「ボーッと聴く」、何か、仏教のお坊さんの境地に近い所なのかもしれません。 新しい発見や創造をするとき、無意識の中に働きかけることが大切である…、また、無意識の中に働きかけることで答えが導き出せるとしたら…。 その人間の持っている潜在的な力、無意識とうまく付き合い、そのうえで時にボーッと何もしないということが大切なのでしょう。 学び、考え、「ボーッ」とする…おためしあれ。 でも、いつも頭の中が「ボーッ」としている私はどうすれば… 「アイディアのつくり方」(TBSブリタニカ ジェームス・W・ヤング) 「無為の力」(PHP研究所、河合隼雄、谷川浩司) 「勉強術・仕事術・私の方法」(三笠書房 竹内 均) |