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Time!! (時間ってなんだろう)


 「子どもの時は、1日がもっと長かったのに…。」「1年たつのが何て早いんだろう…」そう思ったことありませんか?
年をとるたびに、1年が早く過ぎ去ってしまうと感じる、その年齢にともなって時間が加速する現象について、フランスの心理学者ポール・ジャネーは、「20歳の1年は二十分の一である。60歳の1年は六十分の一である。」と言っています。つまり、大人の年齢と子どもの年齢の比が、時間の過ぎる速さを表すとも言えます。大人が30歳で子どもが5歳だとすると、30歳の大人の時間の流れる速さは5歳の子どもの6倍に感じるみたいです。
 時間には、物理的時間と心理的時間があります。物理的時間は時計が刻む時間であり、体験して感じる時間は心理的時間です。私たちは、生活の中でこの二つの時間を共有しているのです。この二つの時間にずれが生じたとき、時間の進む速さを感じるのです。
1時間の会議が3時間にも感じたり、一瞬のうちに終わってしまったように感じたりするのはこのためです。また、恋人を待っている時間は長く感じるのに、恋人と一緒に過ごす時間はあっという間に過ぎ去ってしまう…。一般的に、時間そのものに注意を集中すると、時間を長く感じ、記憶して残っている変化の数や情報が多いと時間を短く感じるといわれています。子どもの時間の感じ方と大人の時間の感じ方も同様に、毎日をただ過ごすのではなく1日にしなければならない課題がはっきりしてくるに従って、1日の進みが速く感じるようです。
 物理的時間と心理的時間の共有から時間の進む速さを感じるということですが、私たちの周りにも、いろいろな時間があるみたいです。
 「宇宙」は、その漢字が意味するように「宇=永遠の空間の広がり」と「宙=永遠の時間の広がり」を共有しています。例えば、シリウスまでの距離は8.6光年、また、七夕の彦星アルタイルは距離16光年です。私たちが夜空を見上げると、いつも「8.6年前のシリウスと16年前のアルタイル」という、いわば異なる過去に属する星々を同時に「今」見ていることになります。
 物理の世界、「相対性理論」を見てみましょう。光速度不変の原理という絶対基準を基にして考えると、時間も空間も相対的なものとなり、「動いているものは止まっているものより、時間の進み方が遅くなる」という結論が導かれてきます。この現象は、実際に地球上でも実験によって確かめられています。
このように同じだと思われた「時間」も、すべて一定ではないみたいですね。

1971年、アメリカのJ.ハートフィールドとR.キーティングは、4台の原子時計をもってジェット機に乗り、地球をまず東回りで、次いで西回りでそれぞれ1周しました。このとき東回りの時計は地上に置いてあった時計に比べ59ナノ秒遅れ、西回りの時計は273ナノ秒進んでいたそうです。
 これは重力場の中で時間が遅れる現象(相対論的効果)を確かめるための実験でした。
ジェット機は、地上よりも地球の重力が小さいところを飛行するため、ジェット機の時間は地上に比べてわずかに進み、また一方、特殊相対性理論により高速で進む物体の時間は遅れるから、その効果も考え合わせなければならない…。結局、相対性理論では、東回りの時計が40ナノ秒遅れ、西回りの時計は275ナノ秒進むと計算され、そのジェット機の実験結果は、相対論の予測とほぼ一致していたのでした。
(1ナノ秒は10億分の1秒)

 また、生物の世界では、それぞれに適した「時間」の世界を生きていると言われています。これについて、生物学者の本川達雄氏がこのように言っています。
心臓が脈打つ速度は動物によって異なっていて、基本的に大きい動物ほど心臓はゆっくり打つ脈を打っています。動物が一生に打つ心臓の回数はどの動物もだいたい同じ約150億回。このような事実から、おのおの動物は「異なる時間(スピード)」を生きていると考えるべきではないか。生き物は、心臓の鼓動に代表されるように、それぞれに固有の「リズム」をもっており、それが、その動物にとっての「時間の流れ方」の基礎となっています。ネズミの時間は早く、ゾウの時間はゆっくりと流れているのです。例えば、物理的時間である「1時間」をとってみても、ネズミとゾウにとってのそれは、まったく「違う長さ」の時間といえるでしょう。これを「生物学的時間」といっています。生き物にはそれぞれの生き物の時間があるのです。
 私たち現代人の生活は「時間密度」が圧倒的に大きくなっています。労働時間はずいぶん減っているのに、「忙しい」「仕事に追われる」という感覚はむしろ強くなっているようです。私たち人間も生物ですので「生物学的時間」を持っていますが、現代社会の生活、そのスピードは、人間がもともと持っている「生物学的時間」にマッチしているのでしょうか? もしかすると、現代の生活や「時間」のスピードが人間の「生物学的時間」とあまりにも乖離してしまっていて、それが現代人の深いストレスとなっているのではないでしょうか。
 宇宙や生物、生命へと思いをめぐらすとき、それぞれに宇宙、生命、人間(個人)独自の時の流れを持っているのではないかと感じます。人間の時間はめまぐるしく速く流れ、変化し、そして非常に短い。それに比べて、生き物や自然などの時間はゆっくりと流れている。それぞれの持つ「時間」そのものの流れ方が違っているように思えるのです。
 広瀬良典 千葉大学助教授はその著書「死生観を問いなおす」でこのように言っています。宇宙や生命の歴史を単に「一本の長い時間上のできごと」としてとらえるのではなく、いわば時間の重層的な重なりとしてとらえることができるのではないか。
例えば、宇宙の時の流れがあり、生命の時の流れ、生物の時間の流れ、ゾウの時間の流れ、ネズミの時間の流れ、人間の時間の流れ、個人一人ひとりの時間の流れというようなそれぞれの時間が、層になって積み重なっている。
 重なり合う時間の層…。人間一人ひとりが、個別の自分という意識を持ち、生まれてから死ぬまでの人生が違うように、それぞれが異なった「自分の時間」というものを持ち1つの時間軸の上を積み重なっている…、異なる人生、生まれも育ちも今後の行きつく先も違う流れを持った人と今、出会い、この場にいる不思議。今、出会っている人とは、異なった時間軸が交差した瞬間なのかも知れません。ですから、この出会い、この瞬間には大きな意味があり、価値があるのではないでしょうか。


◇ 松尾芭蕉 奥の細道 「序文」
  月日(つきひ)は百代(はくだい)の過客(かかく)にして、行(ゆき)かふ年も又旅人也。
  [ 月日は永遠に旅を続ける旅人であり、来ては去り、去っては来る年もまた同じように旅人である。 ]

私たちも、時間軸を行き交う旅人なのです。


参考:「<希望>の心理学」白井 利明 講談社新書
   「死生観を問いなおす」広井 良典 ちくま新書





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