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何を描かないか


一番大事なのは「何を描かないか」


 書店で目にした本のオビに書かれたこの言葉。妙に惹かれて、その新書を手に取りました。その本は、「千住博の美術の授業 絵を描く悦び」(光文社新書 千住 博) です。
タイトルでもわかるように、絵を描くという事についてかかれているはずなのに、重要な事は、「何を描かないか」であるという、そのアンバランス感が妙に気になってしまったのです。

 「絵を描くということは、自分にないものを付け加えていくことではなくて、自分にあるものを見つけて磨いていくこと。自分の良さを磨いていくことです。自分にないものを付け加えていくと、一見、見慣れた上手い絵ができ上がってくるかのように思ってしまいます。しかし、これを落ち着いて考えてみると、どんどん「他人の絵」になってしまうことなのです。…」
 「他人の作品から「盗む」こともときには必要かもしれませんが、むしろ、自分の描いた、いま描いている作品の中に既に答えがあるのにと私は考えています。・・・すべての答えはすでに自分の絵の中にある。自分の絵の中から、いわば不純物をどんどん取り除いてゆく。これは私の「形」ではない。これは私の「色の組み合わせ」ではない。そう思ったら思いきって捨ててゆくべきです。どんどんそぎ落としてゆくこと。勇気を持ってやってみることです。 そしてたった一つでもかけがえのない「何か」が残ったら、それは皆さんの「宝物」です。」

 千住さんは、絵を描くことについて、「まとめようと思うと凡庸になってしまう。自分にあるものを見つけて磨いて行くことが大切」なのだといいます。そのために、本当の自分でないものを思い切って捨てて行くことが大事ということを、「何を描かないか」という言葉で表現しているのでしよう。

  このことは、絵を描くことだけではなく、私たちの普段の生き方にもいえることではないでしょうか。
「かっこいい」や「憧れ」などで色々真似をしてみても、結局他人のまねでしかない。あるいは、世間の常識や社会的な制限などさまざまなものを着飾っている。
それらをひとつひとつ解き放してどんどん落として、本来の自分の姿、生き方を見つけ、本当の人生を磨いていく。自分という大切な命を成長させていくことが大事なのでは。。。
 アートセラピーというように、絵は心理状態・こころを表すと言われています。絵を表現することは自分を表現することに相通ずるのですね。

芸術の秋です。何を描きますか。

「千住博の美術の授業 絵を描く悦び」 千住 博 光文社新書




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