![]() |
おほかたの秋をば憂しと知りにしを ふり捨てがたき鈴虫の声 (秋といえば淋しく悲しいとよくわかっている私ですのに、鈴虫の鳴く声を 聞くと、さまざまなことが思い出されその秋も振り捨てがたくて) |
|
鈴虫は、月鈴虫、金鐘虫などとも呼ばれコオロギ科に属する昆虫です。晩秋までの霜の降りる前頃まで、リーンリーンと張りのある澄んだ音色で鳴きます。その鳴く声が鈴を振るうように聞こえるので「鈴虫」という名がつたといいます。 鈴虫やコオロギなどを飼って愉しむ文化は、耳なし芳一などの怪談で有名な小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が「日本の虫聞き文化」を研究して紹介しています。 虫売りの元祖は寛政年間(1789〜1801)の神田の煮売り商人の忠蔵だそうです。忠蔵が町まわりをしていたとき、根岸の里で多くの鈴虫を捕まえて家で飼育しました。その鈴虫の鳴き声に聞きほれた近所の人々が譲ってくれと言ってきて、これを虫売りに商売替えしたのが始まりです。忠蔵から虫を買った武士の桐山が、偶然にもつぼで人口養殖できることを発見し、共同して飼育もするようになりました。この二人の成功から虫売りの業者が増えてきたので、その数を36人に制限する令が出されたと言います。この制限は、天保の改革の水野忠邦に廃止されるまで、40年近く続きました。 このように、虫の声を愉しむのという風流な心は、日本人昔からあるのですね。 平安時代の「源氏物語」第二部にも「鈴虫の帖」というものがあり、その頃から鈴虫などの音色を愉しんでいたことが伺えます。さきに記載した「おほかたの秋を…」の歌は、この「源氏物語」の「鈴虫の帖」からの出典です。 |
|
この「源氏物語絵巻」第三十八帖「鈴虫」は、二千円札の図柄に採用されています。でも、あまり出回っていないので、気がつかないかも知れませんね。 鈴虫の寿命はわずか110日。そしてその鈴虫の美しい音色を聞かせてくれるのは最後の20日間だけだといいます。(二千円札は、鈴虫の寿命とおなじ薄命なのでしょうか? |
![]() 【財務省HPより】 |
|
秋が深まっていきます。 さあ、耳を澄ましてごらん。 鈴虫の音色が、私たちに自然な心を取り戻してくれるから…。 |